有給の取得義務とは?法改正があった有給についてわかりやすく解説

労働者はみんな大好きな有給休暇。今回は有給休暇に関するお話です。

有給休暇とは、言ってみれば「働かなくても給与が発生する日」です。大事な社員には気持ちよく休んでもらいたいですが、雇用する側としては、業務に支障が出ない形を考える必要もあります。たとえば「取得日を閑散期に調整してもらう」「繁忙期を避けてもらう」といったことは可能なのでしょうか?

有給休暇は労働基準法によって与えるように義務付けられています。

違反した場合には罰則が科せられる可能性もあるため、有給休暇について改めて確認しておきましょう。

目次

  1. 有給休暇とは?
     1-1.有給休暇を付与する対象と条件
     1-2.有給休暇の付与日数
  2. 有給休暇の取得義務
     2-1.労働者側の権利【時期指定権】
     2-2.使用者側の権利【時季変更権】
  3. まとめ


有給休暇とは?

大体の方は聞いたことがあり「自由に休める日」程度の認識はあるのではないでしょうか。ざっくり言えばその通りなのですが、今回はもう少し詳しく解説します。

有給休暇の正式名称は年次有給休暇といい、賃金が発生する休日のことです。

これは労働基準法の第39条で定められていて、雇用者は毎年一定の日数を労働者に付与しなければなりません。

※労働基準法とは・・・労働に関する最低基準を定めた法律。労働者の権利の保障を目的として、有給休暇以外にも労働時間や賃金などの最低基準が決められています。



有給休暇を付与する対象と条件

【対象】
雇用形態にはアルバイト・パート・契約社員・正社員などいろいろあります。しかし、有給休暇は雇用形態を問わず、条件を満たす全従業員に対して付与しなければなりません。

【条件】
有給休暇を与える条件は以下の2つです。

・雇用した日から6ヶ月間継続勤務していること
・上記6ヶ月の全労働日の8割以上を出勤していること

以上の2つになります。この2の要件を満たす場合、雇用形態に関わらず有給休暇を付与しなければいけません。

【注意点1】
例えば定年退職した日から再雇用された日まで空白期間がない場合には、継続勤務としてみなす必要があり、有給休暇は定年前から通算した日数を付与することになります。しかし、客観的に判断して雇用関係が終了していた場合には、有給休暇は引き継がれないことに留意してください。

例えば・・・

・30年勤務したAさん
2021年3月31日退職→2021年4月1日再雇用→【有給休暇引継ぎ】

・30年勤務したBさん
2021年3月31日退職→2022年4月1日再雇用→【有給休暇は引き継がれない】
※あくまでも例であり、継続勤務とみなされなくなる期間が1年というわけではないので注意してください。

【注意点2】
雇用形態が途中で変わった場合も有給休暇は引き継がれます。

例えば・・・

・パートで入社したCさん
2021年4月1日アルバイトで入社→2023年4月1日付で正社員へ変更
この場合、2021年4月1日を勤務開始として考え、2023年4月1日時点では、勤続年数2年となります。



有給休暇の付与日数

要件を満たした労働者に何日の有給休暇を付与すればよいのか確認します。

労働者の雇用形態や勤続年数によって変化するので、注意してください。

【パターン1.通常労働者の場合】

【パターン2.週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の場合】

パターン2は少しややこしいかもしれませんが、ミスがないようにしっかり把握しておきましょう。

週の労働時間が多いほど付与する有給休暇が増えていくイメージです。

参考:厚生労働省 年次有給休暇取得促進特設サイト
URL:https://bit.ly/3zvYE51

【有給休暇の繰り越しについて】
有給休暇は毎年付与され、最大で20日の繰り越しもありますが2年で時効です。フルタイムで6年6ヶ月勤務した場合20日の付与があり、さらに繰り越しも20日であれば40日の有給休暇が認められます。しかし2年より前に付与された有給は消滅しまいます。

さらに有給は取得義務もあるので、もったいないと取得しないでいるよりは、計画的に使っていくのが理想です。

【注意点1】
出勤率を算出する際には、育児休業・介護休業を取得していた期間は出勤扱いとなるため注意してください。
他にも産前産後の休暇、業務中のケガなどによる休業などは、出勤としてカウントする必要があります。

逆に計画停電などの会社都合の休業日については、労働義務が発生しないため労働日とカウントしないことも覚えておきましょう。



有給休暇の取得義務

時代に合わせて改正されていくのが法律ですが、労働基準法にも改正がありました。平成31年4月から「毎年5日間は確実に有給を消化させること」が、雇用者に対して義務付けられたのです。

背景としては「有給休暇を取得しづらい」などの理由により、取得率が伸びない状況が続いたためです。基本的に付与された有給休暇は全て消化するのが本来の運用。「5日間取らせればいい」という解釈ではなく、労働者に対して可能な限り取得するよう促していくことを理想としてください。



労働者側の権利【時期指定権】

労働者が有給の取得時期を指定できる権利です。一部の例外を除き、原則として有給休暇は労働者が取得したいタイミングで与える必要があります。

また、法改正により5日間は確実に有給を取得する必要がありますが、5日間に満たない場合は「使用者による時期指定」によって取得させることができます。これは労働者からの申し出ではなく、雇用側が労働者に取得希望時期を聴取し、その時期を最大限尊重して有給を取らせる手段です。



使用者側の権利【時季変更権】

雇用者が申請された有給取得時期をずらすように求めることができる権利です。この権利を行使できる条件としては「正常な業務の遂行や運用を妨げる恐れがある場合」においてです。

具体的には、同じ時期に取得請求が殺到し代替要員の確保が困難で営業が難しくなるケースなどです。単純に「忙しいから」というだけでは認められないため注意してください。

なお、あくまでも「変更」なので、他の日に取得させなかった場合は違法となる可能性があります。



まとめ

有給休暇とは労働基準法で定められた労働者の権利です。半年以上勤務し、その間8割以上出勤している場合は雇用形態を問わず付与する必要があります。さらに勤続年数が増えれば付与される日数も増え上限はありますが繰り越しも可能。

これが有給休暇の基本的な概要でした。

労働者には希望のタイミングで有給申請できる【時期指定権】があり、使用者側は原則としてそれを認めなければいけません。しかし使用者には【時季変更権】があり、業務の運営が困難になる場合など、取得時期をずらすように求めることも可能です。

そして法改正に合わせて5日間の取得義務が生まれ、5日取得できていない場合は使用者が労働者に対して取得希望を聴取し、その意見を尊重して有給を取らせる必要が出てきました。

労働者は会社にとって大切な資産であるはず。労働者にしてみても勤め先を失うことは生活に直結するほど痛手です。義務だから権利だからと主張するよりも、使用者と労働者、お互いが気持ちよく仕事ができるような関係を目指してみてはいかがでしょうか。

使用者は労働者を尊重し、労働者は使用者に配慮して日頃から良好な関係を作っておくと、有給の相談も円滑に進むかもしれません。



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ライター:彦坂